今日はエッセイをお届けします。
絵も一枚登場します。それだけご覧になりたい場合はスクロールをお願いします!
プロローグ
バネッサ・パラディ
フランス出身の女優、歌手、モデル
元パートナーはジョニー・デップ
写真は1992年リリースのアルバムのジャケット(オリジナルは少し色が入っているはず)
それでは……Essay 誰かのミューズをお届けいたします。
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ある日の会話 90’代中頃
バネッサは世界で一番美しい女性なんだ。
そんな事誰が決めたの?と私。
僕…。
かつてロンドンにいた夏、こんな会話を男友達 S と交わした事を覚えている。彼は写真をやっていた人で、ついつい彼女に似ている人を被写体に求めてしまうみたいな事を言っていた。オブセッションだね……と。オブセッション「obsession」とは英語で何かに取りつかれて始終その事を考えてしまうみたいな意味である。
先日、たまたま通りかかった新宿の中古レコード屋の壁面に彼女の懐かしいレコードジャケットのポートレートがあしらわれているのを 見てその会話を思い出したのだ。(冒頭の写真)
年を重ねた彼女は今も素敵であるが、当時はもっと若かったし小悪魔的ロリータキャラで人気があったと思う。しかもこのアルバムをプロデュースしたミュージシャン、レニー・クラビッツと恋仲だったはず。このアルバムは二人の密な関係を音楽に昇華させた素晴らしい作品であった。
とにかく当時から彼女にはレニー以外にもクリエイティブな世界の人達を虜にするような存在というイメージがあった。
たまたまここで思い浮かぶのが、クリエイターの多くがある特定の女性をクリエイションの源にして創作力を引き出した、という例であるが、、、
☆画家 Salvadorダリにとってのガラ夫人
☆写真家 アラーキーにとっての陽子夫人
☆ジョン・レノンにとってのヨーコ夫人
(ブログで前に紹介したジョージ・ハリソンもまたしかりである。)
等々きっと様々な組み合わせで他にも誰かが誰かを虜にしてクリエイションを産み出した例は一杯あるだろう。
そして思い返せば、私自身もある俳優さんの少年のような美しさに心奪われ習作のポートレートを描いた事があった。
恥ずかしいので誰かは明かしませんが、当時としては入魂の作。
しばらく自室のイーゼルに置きっっぱなしだったこの作品、実は部屋に訪れた人をあっ!と言わせたことが一度や二度ではなく目撃した友人の多くがある種のショックな様子を示していた。本当に一時的なマイブームだったから熱の覚めた私のほうがむしろそのリアクションに驚いた。
私なりの分析として、この絵には想いがのりうつってしまったのだと思う。怖くはないけど絵を含め、創作ってそういうところがある不思議な世界だと思う。きっとその想いがそのまんま第三者に伝わってしまったのだろう。
17世紀のオランダ絵画風にシックな色で、とにかくこの子の少年時代の美しさを描きたいと思ったことだけは覚えている。一時的ではあったが確かにオブセッションは創作の強烈なエネルギー源になるということを身をもって経験した。
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エピローグ
ところで先ほどの話には後日談があります。
秋になり私は海沿いの小さな大学のある町に引っ越しSともすっかり疎遠になっていた。新生活をはじめたそんなある日、学校の図書館のマガジンラックにバネッサ表紙の雑誌を見つけた。彼女の特集号とある。あんなオーバーな事を言って思い込みの激しいSはこれを買っただろうかとやや皮肉交りにあの時のやり取りを思い出していた、、、雑誌を手に取り、バネッサね、、、見るか…位の軽い気持ちで記事を探し始める。が、、、どこを探してもバネッサがいない???………………………
なんと彼女のページだけが何者かによってきれいにバッサリと切り取られていた!!
ここにもオブセッションで動かされた人物がいた………。
その場で呆然とする私であった。
©️2019 Tomoko’s Art 主婦日記